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暖かな風が、ご神木の上にあるこの天狗様の家にも流れ込んでくる。
窓から差し込む日差しも柔らかくて、照らされていてはたちまち眠気に襲われてしまう。 ───春も半ば。 すっかり花片を広げた薄紅色の花も、そろそろ葉桜にその衣を変える頃合い。 火群様に連れられて見に行った山の上の見事な一本桜も、先日丈爺様と一緒にお花見に行った時には既に満開を過ぎ、ひらひらと雪のように花片を散らしていた。 瞼を閉ざせば、ありありと浮かぶ。闇の中、月光に照らされて白い輝きを纏った花片が、ひらひらと優雅に舞い散る様。 この夜桜は爺には内緒だと、悪戯っ子の様に笑う火群様と二人笑いながら見上げた一本桜の美しさが瞼の裏に蘇る。 同時に蘇ってきたのは、夕闇の中ではらはらと散る桜の花片。 山の上の一本桜よりやや薄紅色の濃かった桜の木。それは随分と昔───幼い頃に見上げた桜だった。 もうはっきりとは覚えていないけれど、あれも見事な桜だったように思う。 物心がつき、はっきりと記憶に残っている最初の桜は、陽稲村の村主様のお屋敷に植えられていた小さな桜の木。 お屋敷に引き取られるよりも前、既に記憶が蘇ることも稀になってしまったあの桜。山の上の一本桜の優美さには敵わないけれど、それでも十二分に美しい桜だった。 薄れてきた記憶の中でも、あの日、雪のように───または雨のようにはらはらと肩に舞い降りてきた薄紅色の花片の柔らかさと微かな甘い香りだけはよく覚えている。 あれは、この雛菱山の頂上─祠へと伸びる参道の途中にあった桜の木。 「もう桜も終わりますね」 残念そうに呟けば、カーと一鳴きした丈爺様が大きく頷いた。 「そうだのぅ。あともう一回くらい花見に行っても良いですなァ、若」 「・・・爺は桜見るより酒が飲みたいだけだろ」 「若ほどではありませんがのう」 「うるせー」 そう言えば、先日のお花見でも、お二人は浴びるほどのお酒を飲んでいた。見上げた桜も確かに綺麗だったけれど、 火群様と丈爺様とわいわいと賑やかにお酒を交わすのが楽しかったのも事実。 私も実際の所は、花より団子なのかもしれない。 小さく笑いながらふと視線を空へと向ければ、いつの間に迫ってきていたのか、そこには真っ黒な雲。つい先程まで頭上に広がっていた青空が、あっという間に塗り替えられてしまっていた。しかし、いつの間に。 「どうした、藤」 空を見上げ首を捻っていると、ごろりと寝転がっていた火群様が身軽に体を起こし、私がそうしているように外へと視線を向けた。 同様にパタパタと小さな翼を羽ばたかせて体を浮かせた丈爺様が真っ黒な雲を見上げた。 「おや、あれは雷雲じゃな」 黒い雲は風に乗ってあっという間に塒の頭上。 じっと黙って雷雲を見上げていた火群様が、不意にポツリと呟いた。 「・・・・・・・・・・・アイツか」 「そのようですな」 「え?」 火群様と同様に空を見上げていた丈爺様が首を縦に振り、家の中へと戻ってくる。 お二人の言っていることが分からない私だけが、きょとんと首を傾げる羽目になってしまった。 雲を見上げて眉を寄せておられる火群様に倣って再び空を見上げてみるけれど、そこには真っ黒な雲しかない。 アイツ、と仰ったからには、そこにどなたかがいるのだろうけれど、私には何も見えない。 大抵の妖怪を視る目を母から授かってはいたけれど、視力は火群様たち妖の方には到底敵わない。それでも火群様と丈爺様が見ているものを見たくて目を凝らす。 その時だった。 「藤!」 唐突に名を呼ばれると同時に、 「わっ」 窓から半身を乗り出していた私の腕を、火群様が性急に引いた。倒れる、と思って慌てて手を伸ばすよりも先に、腕を引かれるがまま火群様の腕の中に倒れ込んでしまっていた。 「?」 唐突に火群様の胸の中に抱き込まれる形になってしまった。突然どうされたのか問おうとしたところで、火群様の腕に強く頭を抱き込まれ、その問いも封じられてしまった。 次の瞬間、 バリバリバリバリ・・・ドオオオオーーーン!!! 耳をつんざくような雷鳴が辺りに轟き、思わず体が竦んだ。周囲の空気をビリビリと震わせた轟音はすぐに消えたが、 あまりの衝撃に強張ってしまった体からはなかなか力が抜けない。それを察してか、私の体を強く抱き込んでくださっていた火群様が腕の力を緩め、 代わりに硬直している私の肩を優しく叩く。 「おい、大丈夫か、藤。耳は? 雷に目を焼かれてないか?」 その問いに、先程の強い抱擁の理由を悟る。どうやら、雷の凄まじい光と音から私を庇ってくださったらしい。 ありがとうございますと礼を述べてからパチパチと瞳を瞬かせる。火群様の腕に庇われて、稲光に目を焼かれることも、 轟きに鼓膜を破られることもなかったが、それでもあまりに近くではじけた雷鳴の凄まじさに驚いた心臓が未だドキドキ高鳴ったまま。 「お、驚きました」 「どこか痺れたりはしてねーか?」 「あ、はい。大丈夫です」 私を胸に庇った所為で火群様は雷鳴をまともに耳にされたに違いない。心配になって見上げたが、いつもと変わりないご様子にほっとする。やはり人間よりももっともっと頑丈に出来ているらしい。 良かった。 ほっと安堵の溜息をついていると、どこかに体を埋めて隠れておられたのか体中の羽をバサバサにした丈爺様が飛んできて窓辺に止まった。そして、下を覗き込む。 「これはまた派手に落ちたもんだのぅ。おーい、大丈夫かー?」 「え?」 突然大声でご神木の根元へと呼びかけた丈爺様。誰かおられるのかと私も下を覗き込んだけれど、何も見えない。 雷はご神木には落ちず、そのまま大地に吸い込まれたらしい。祠の傍に大きな穴が空いているのが見て取れた。 丈爺様が一体誰に呼びかけたのか問うため口を開いたが、そこから問いかけを零す前に、耳慣れない高い声が部屋の中に響きわたった。 「やっほ〜!! ひっさし振りやな〜、火群〜♪」 先程の雷鳴、とまでは行かないけれど、耳にキンと響く高い声。 驚いて振り返ると、いつの間にか家の入口に見知らぬ女性が立っていた。 (・・・・・・・・・・・女性??) 多分、女性。 惜しみなくさらけ出された足はスラリと細く、同じく肩から伸びた腕も細い。衣服に覆われていないおへそあたりには男性にはないくびれがあった。 女性、だけど、人間の女性ではないみたい。 彼女の頭に生えた二つの尖った耳がそれを物語っていた。濃い灰色の毛に覆われた耳。同じく濃い灰色の髪の毛は短く、サラリと小振りな顔周りを撫でている。日の光に良く焼けた黄金色の肌。細い腰の先には、ふっくらとした灰色の尾。狐の尾によく似たそれが、ご機嫌な様子でゆらゆらと揺れている。 腕やおへそ、太ももをさらけ出したそのお姿に、目のやり場に困って視線を漂わせれば、彼女の腕の先に、鷲のように尖った爪が光っているのが見て取れた。 これまでに見たことはないけれど、この方も妖なのだろう。 「相変わらず賑やかなご登場をありがとうよ、雷獣」 「もう、イヤやわー。雷獣やなくて、ライちゃんって呼んでっていっつも言うてるやーん」 どうやら火群様は雷獣と呼んだこの方と面識があるご様子。 雷獣と呼ばれた妖のお方は、火群様の嫌味に気付いているのかいないのか、口元に八重歯を覗かせて快活に笑いながら、バシバシと火群様の背を叩いている。 どうやら、この賑やかすぎるご登場はいつものことらしい。 「・・・・あ、あの、火群様。この方は」 「ああ、コイツは雷獣。雷雲に乗ってはいっつも落っこちて雷を鳴らせる喧しい小娘」 「ちょっとちょっとちょっとー! 火群ったら、その紹介の仕方はないんとちゃう!?」 「これ以上に的確な紹介はねーだろ」 「ちょぉ、も一回登場からやり直すさかい、もっと素敵な紹介文考えといてーな」 「やり直すな!!」 「藤。この娘は雷獣と行って、雷雲に乗って空を飛び回っては落雷と共に地面に落っこちて人を驚かせる雷娘じゃ」 騒いでいる火群様と雷獣様を無視して丈爺様が説明してくれたけれど、やっぱり火群様が仰っていた通り、雷雲に乗って落雷と共に落っこちる賑やかな方、ということらしい。 「で、火群。この子がお嫁さんやね!?」 火群様との遣り取りに一段落付いたらしく、雷獣様がずいっと私の顔を覗き込んできた。その近さに面食らいながらも、何とか体を二つに折って三つ指をついた。 「ふ、藤と申します。初めまして」 名を告げれば、「きゃー 」と黄色い悲鳴が上がった。(・・・な、何??) 何故ここで悲鳴を上げられなければ、と首を傾げながら二つに折っていた体を起こせば、 「ちょっとォ! めっちゃ 可愛いやんか〜っ! アンタってばやっぱ面喰いやったんやね!」 バシバシと火群様の腕を叩いている雷獣様と、 「・・・・うるせーな」 頭を抱えている火群様の姿。どうやらお元気過ぎる雷獣様に、火群様はついていけていないご様子。 かくいう私も、多分、無理。 なんて考えていると、雷獣様がぐるっと勢いよく私の方を振り向き、にぱっと八重歯を見せてお笑いになった。 「うちは雷獣。可愛いルックスに反したイカツイ名前やろー?? せやから、うちのことは雷獣やのうて、ライちゃんって呼んでなー 」「・・・・・・・・・・・・・・・・は、はい」 ズイズイと迫ってくる雷獣様に否と言えるはずもなく、私は力なく首を縦に振るしかなかった。 「で、藤は何処の子ォなん?? 都からこの悪徳天狗に攫われたんか??」 「人聞きの悪いコト言うなよ、雷獣。オレの村に住んでる人の子だ」 「えー!? あの小っこい村にこんな別嬪さんが居ったん?? 驚きやわ」 「オレもだ」 「アンタあの村の天狗やろ。そんくらい知らんでどないすんの。まだまだやなァ」 情けないなー、とわざとらしく溜息をつく雷獣様に、火群様のこめかみがピクリとひきつるのが分かり、慌てて口を挟ませていただく。 「あ、あの、私はお屋敷の中から出てはいけなかったので、火群様がご存じないのも無理はありません」 「出たらあかんて、何でー?」 火群様に向けられていた視線が私に移ったことにほっとしたものの、問い返されて思わず言葉に詰まる。別に話せないことではないけれど、進んで話したいようなことでもない。 「・・・母との、約束で」 「何やのそれ。箱入り娘ってワケかいな??」 「息子です。でも、箱入りではありませんよ。お屋敷ではご奉公させていただいていた、ただの小間使いですので」 「こーんなに可愛いのに勿体ないっ! 都に行けばもっとその可愛い顔を生かしてウハウハな生活が出来たんとちゃう?? 何もこ〜んな天狗のトコに嫁がんでもええやん」 「こんな天狗で悪かったなァ 」「ちょっとした言葉の綾やんかァ。そんな怒らんといてーな、火群兄さん」 雷獣様は私と母の約束について深く問い詰めることはせず、すぐにまた火群様と話し始めた。 そのことに、ほっとする。 母と交わした約束は、幾つもある。けれど、交わさなければならなかった理由の分からない約束ばかり。だから、自分が交わした約束なのに、多くを語ることが私には出来ない。 外の世界を知ってはならぬ。一人で生きるのじゃ。決して、人に己のことを知られてはならぬぞ。良いな、藤貴。首を傾げる私に無理矢理約束を交わさせた母。 いつの日かその理由を教えてくれるだろうと思っていたけれど、母は黙ったまま儚い人となってしまった。 もう屹度、あの約束の理由は一生分からないままなのだろう。 それを悲しく思うけれど、それでいいのだと、何処かで納得している自分がいる。それは、理由を尋ねる度、 知らぬ方が良いのじゃ。そう言って悲しい顔で笑った母の所為かもしれない。 「・・じ。藤ってば、聞いとるー?」 雷獣様の呼び声で、意識が現実へと舞い戻る。過去の思い出に意識を向けていた所為で気付かなかったけれど、いつの間にか雷獣様が火群様から私の方へと視線を移していた。 (火群様は?) と見れば、ぐったりした様子で杖に片肘をつき、そこに顎を乗せていた。雷獣様のお相手ですっかりお疲れになったらしい。 「藤!」 「あ、はい。何でしょう」 「藤は、今まで一回もあの村から出たことないんやな?」 「いいえ。生まれたのは別の場所だったそうなので、他の場所にも行ったことはあるようです。覚えてはいないのですが」 「ふーん。そうなんや」 相槌を打った後、しばし何事かを考えこんでおられた雷獣様だったけれど、すぐにポンと手を叩いて、再び弾けんばかりの笑顔をぐいっと近付けてきた。 「なあ、藤。世界はな、もっともっと広いでー! 若いんやからこんなトコに閉じこもってないで、広い世界を見てみなあかんわ!」 「は、はぁ」 「よっしゃ。うちが雲に乗せたる。都に行くでー♪」 「え、いえ。私は───」 結構ですと断ろうとしたのだが、 「大丈夫やって! 空の上からちょ〜っと見るだけなんやから」 言って、今度は視線を火群様へと向ける。 「な、ええやろ、火群」 火群様がどんな答えを唇に載せるのだろうかと私も視線を火群様へと向けた所で、突然、丈爺様がカーと一声鳴いた。 「若」 丈爺様の呼び声に顔を上げた火群様は、視線を窓の外へと遣った。 そこに何かあるのかとつられて目を向ければ、 「カー」 一羽の烏がバサリと羽音を響かせて窓辺に程近い枝に止まった。 ただの烏ではない。何となくそんな感じがする。 「・・・兄上様からのお遣いですか?」 火群様のすぐ上の兄上様─相樂様がお遣いに寄越したのも烏だった。また相樂様からのお遣いだろうかと問うてみれば、 「ああ」 「だが、藤が知っている兄上様ではないがのぅ」 「え?」 そうだと頷いた火群様と、そうだが違うと答えた丈爺様。 では、火群様の別の兄上様からだろうか。声に出して問う前に、火群様が静かな声で名を呼んだ。 「藤」 「はい」 「雷獣と出掛けて来い。ソイツと一緒がイヤじゃなければ、だが」 「こーんな可愛い子とデートできるんやから、イヤなわけないやんなァ、藤」 「え、ええ」 「雷獣、都に近付き過ぎるなよ」 「分かってるってー。ほら、行くで、藤」 「は、はい」 雷獣様に手を引かれて、立ち上がる。 「藤。楽しんで参れ」 「・・・はい」 どうやら丈爺様も火群様と残るらしい。 お遣いの烏。 これから誰かが来られるのか、それとも、火群様たちがお出かけになるのか。 一体どなたが? 一体何処へ? 教えてもらえないのは、何故だろう。ここから遠ざけようとされているのは何故だろう。 少し、寂しい。 「藤」 「はい」 「雷獣みたいに雲から落っこちねーように、しっかり掴まってろよ。オレもすぐに行く」 まるで私の不安を晴らそうとするかのように、優しい笑みを向けてくださる火群様。私の胸をよぎった小さな侘びしさに気付かれてしまったのだろうか。情けなく思いながらも、向けられた笑みで僅かに浮上する気持ち。 「ほな、行ってきまーす♪」 雷獣様が指笛を吹く。それに応じて雷獣様の髪と同じ色をした鉛色の雲が下りて来た。人一人が乗るには十分だが、二人が乗るにはいささか窮屈な大きさの分厚い雲。 そこにぴょんと元気よく飛び乗った雷獣様が、「早く」と私を促す。 そうは言われても、生憎と雲に飛び乗るほど肝は据わっていない。 正直、怖すぎる。 「もう。だーいじょうぶやって。落ちひんからー」 「わっわっ 」恐る恐る足を伸ばしていた私に焦れたらしく、性急に手を引かれ、安全を確かめる間もなく雲の上に乗っけられていた。結果、ただの人の子である私の体は雷獣様と違って雲をすり抜けてしまうのではないかという心配は杞憂に終わったのだけれど、心臓に悪い。 「ほな、行っくでー♪」 「行ってまいります」 ふわりと雲が上昇する。 ドキドキと高鳴る胸をなだめすかしながら、火群様と丈爺様に頭を下げれば、バサバサと翼を降って丈爺様が見送ってくれた。 火群様を見遣れば、 「気を付けろよ」 と、私を気遣って下さる御言葉。 「はい」 嬉しくて笑みを返せば、同様に笑みを返される。 思えば、こうして火群様を家に残して出掛けるのは初めてのこと。いつもは、翼を開いてここから飛び出して行くのは火群様の方。 火群様もこんな気持ちなのだろうか。 残していくのは、少し不安。 何でも出来る天狗様にこんなことを思うのは失礼なことかもしれないけれど。 ぐんぐん上昇していく雲から身を乗り出して、思い切って手を振ってみれば、 「あ」 照れくさそうにしながらも、火群様が手を挙げてくれた。 不安が消えて、温かい気持ちが胸に広がる。 追いやられた不安の種は、完全には消えてくれず、また不意に芽吹くことはもう知っている。 私は人の子で、火群様は妖。 何もかもが違っていて、分からないことだらけで、それを埋めてくれる確かなものなど何も無い。 相樂様の奥様─桔梗様の様に、種族を越えて永遠の愛を誓ったわけでもない。 私たちの間には、何も無い。 ただ、来年の桜も一緒に見ようという約束を交わしただけ。 ( いいえ。それで、十分。我が儘になってはいけない)己に言い聞かせる。 何故、教えてもらえない。 何故、この場に残してもらえない。 そんな不服を感じることが、そもそもの間違いで、非道く愚かなこと。 己が存在する居場所を与えていただいただけでも、十分すぎるほど。長い天狗様の時間の中のほんの一時でも私を傍に置いていただけるのだから、十分。 分かっているのに、一つ何かを得れば、つい欲が出る。はしたなくも、もっとと強請りそうになる己を叱責する。 「よォし、ちゃんと掴まっときや−、藤」 「───はい!」 風が、少し乱暴に頬を撫でる。 首だけを巡らせて振り返れば、ご神木が既に遠い彼方。 そこへ伸びる参道の途中、山道に疲れた足を癒してくれた小さな桜の木を思う。 あの日、既に記憶の隅に追いやられ花片の柔らかさと甘い香りしか残っていないあの遠い日、夕闇に染まった桜の下での約束事。 あの日のことを他の誰が忘れてしまっていても、自分だけは忘れてはならない。 思い出せ、と己に命じる。 再び、胸に刻み込む。 求めてはならない。私は、捧げる為に此処に来たのだから。 |