『真っ白な真っ白な、 雪景色の中で』 イラスト:JAM様
ねえ。教えて。 もう一度、戻れるのだとしたら、君はどうするかな。 僕が魔物になる前か、君が月に願う前か、僕と君が出会う前か。どこに戻る。 それは君が決めて良いんだ。僕はきっと同じ道しか選べないから、君が選び直して良いんだ。 待って。聞いて欲しいの。 私は、今でも幸せよ。誰が、なんと言おうとも。誰が、どんなに嘆こうとも。 ただね、あなたの嘆きにだけは、耳をふさぎたくなるの。だから、泣かないで居て欲しいと思うの。 わがままかしら。ねえ、笑っていて。 だって、大好きなの。 春の日差しと同じ、あたたかなあなたの微笑みが、森に響く笑い声が、雪に映える黒い髪が、瞳が。 戻れるのなら、ねえ、お願い。笑っていたあの時で、時間を止めて。 大好きなあなたと笑っていられたらそれであたしは幸せだったから。 だけど、さよなら。 みんな悲しい顔をしていたけど、お前は泣きそうな顔で怒っていたけど。それでも、時は流れる。 お前も進め。守るべきは、もうオレじゃない。オレは行くから。幸せになって欲しい。 ごめんな。少しだけ、反省してるから、どうかもう、忘れろ。 全ては雪の中。真っ白な真っ白な雪だけが、全てを知っている。
深すぎた 愛 の結末に嘆く 精霊の瞳 を知っている。 幸せだ と必死に笑っている 少女の思い を知っている。 幼い恋に 全身 を捧げた 精霊の願い を知っている。 満足げに 眠る 少年の、けれど 残された悲しみ を知っている。 一人佇む 哀れな人 の、声にならない 涙の慟哭 を知っている。 全ては、雪の中。 知る人も、もう、いない───雪の中。 |