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「は? いつから??」




 怪訝そうな顔で、聞き返された。


「いつからって言われても・・・」
「・・・え? 分かんないわけ??」
「・・・・・」
「はァ? 何ソレ」
 分からない。


 いつから好きだったのかなんて、分からない。


 そもそも何故好きなのかも分からないと言ったら、お前はもっと不機嫌な顔をするんだろうな。
 ずっと一緒に居すぎて、いつから好きだったのかなんて分からない。お前のどこをこんなにも好きになったのか、それも分からない。


 それでも、イヤだと思ったから。


 お前が俺のそばから居なくなる───?


 そう思った時に、何をしてでも、どんなことをしてでも、俺のそばにとどめておきたいと思った。
 離したくないと思った。
 なあ。これはもう、好き、だろ?


 好きになった理由なんて、後で探せばいい。お前の納得する理由なら、後で探すから、とりあえず。


「とりあえず、行くな」
「─────」


 行かないでくれ。
 伸ばしたこの手を、どうか、取って欲しい。
 みっともなく震えているこの手を、笑ってくれていいから、握ってくれ。


「・・・何、この手」
「何でもいいから、取れよ」
「はァ? さっきから、何? ・・・取ればいいわけ??」


 おもむろにのばされた俺のものよりも小さな手。
 早く、触れてくれ。
 一度触れたなら、俺はもう、手放さない。


「ただ、気をつけろよ」
「は?? 取れって言ったり、今度は気をつけろ? 何それ───」
「一度握ったら、もう離さないから」

「──────」


 離してやらない。
 一生、つなぎ止めて、離してなんてやらない。


 それでも良いなら、この手を取って。


「・・・もし、取らなかったら?」
「消えるよ、俺は」
「ひ、卑怯だ」


 そうだよ。俺は卑怯なんだ。俺がこう言えば、お前が断れないことを知っている。知っていて言ってるんだ。
 それでも、無理矢理にでも、抱き寄せてしまいたい。
 抱き寄せて愛を告げて、そして、それからでいいだろ。ちゃんと、お前を惚れさせるから。


「いいから、取れよ」


 差し出した手のひらが、冷たい。
 早く、温めてくれ。


「だから、お前、卑怯だって・・・!」
「うん。知ってる」
「・・・爽やかな顔で言うなよ」


 そろそろとのばされる手を待つのがじれったくて、届く前に、掴む。


「あっ! ちょっ・・!」
「ありがとう」
「・・・っ! 卑怯だ」


 赤い頬が、愛しくてたまらない。
 手のひらの中に得たぬくもりが、熱くてたまらない。


「もう、離さないぞ」
「・・な、何だよ、もう/////」


 何でもない。
 ただ、


「好きだ」


 それだけ。
 ずっと告げられなかった言葉を、今告げただけ。
 これからずっと告げると決めただけ。


「好きだよ」
「もう、いいって////」
「好きだ」
「だからもういいって!」


 何度告げても、尽きることのない言葉を。
 手放してやれない代わりに、一生言い続けてやろう。




「好きだよ」












「─────うん」










 さあ、始めようか。


 今更、だけど───。










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*  あとがき *




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